単品怪談

飴のおばちゃん


 平日の午後。私、2歳になる私の娘、我が家に孫の顔を見に来た私の母親の三人は、昼食後、自宅近くの公園に行った。
 公園のベンチに腰掛け、他愛ない話に花を咲かせる。

「世知辛い世の中やねえ」

 母親がぼやいた。お昼のバラエティ番組で、近所の子供にお菓子をあげたことによるトラブルを報じていたのだ。

「バッグには必ず、誰かにあげるための飴ちゃんが入ってるのが、大阪のおばちゃんちゅうもんやんか」

 そこから、子供の頃に見知らぬおばちゃんから飴をもらった話になった。

「へー、お母さんの子供の頃にも、そんなおばちゃんがいてたん」

「いてたよ。芋飴もろたな。うちらは『飴のおばちゃん』て言うてたな」

「うちももろたなあ。うちのときは明治のキャラメルやったけど。うちらも『飴のおばちゃん』言うてたわ」

「いつの時代も同じか」

 母娘二人、ひとしきり笑い合う。

「せやけど、何回ももろたのに、どんな人やったか覚えてないねん。なんでやろ」

 ぽつりと母親が言った。それを聞いて私も昔のことを思い返してみたが、私もどんな人から飴をもらったか思い出せなかった。

「あんたら、アメちゃんあげよか」

 いつの間にいたのか、私たちの前に立っていた女性から不意にそんな声がかかって、私、母親、私の娘、三人同時になんの疑いも持たず、ごく自然に手のひらを差し出した。
 母親の手には芋飴、私の手には明治のキャラメル、娘の手にはアニメキャラクターのキャンディが乗せられていた。
 我に返って顔を上げ、辺りを見回したが、飴のおばちゃんは、どこにもいなかった。


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