「あたし霊感があるんだ♪」
と、同じ組のハルカちゃんは言う。
学校の帰りとか、道を歩いているときに、急に、
「こっちの道はだめっ! 悪い霊がいっぱいいるよ!」
とか言って、別の道へ行ったりする。いっしょに歩いていた子たちはびっくりするが、怖いのでハルカちゃんについていく。
「悪い霊にくっつかれたら、連れて行かれてしまうんだからね! 危ないんだよ!」
あまり「霊感がある」とか「見える」とか言わない方がいいよ、とあたしはハルカちゃんに言ったのだが、
「あたしは悪い霊から、あの子たちを守ってあげてるの! なにがいけないの? くろかみさんって、変な子!」
そう言われて、それからあたしは組のみんなからハブられてしまった。
そんなある日の帰り、あたしが校門を出ると、ハルカちゃんと仲間の女の子たちがいた。
ハルカちゃんたちのまわりには、全身真っ黒な、顔のないマネキン人形みたいな人が何人も、ふわふわとまとわりついていた。
(霊が見える人なのに、どうしてハルカちゃんはあれに気がつかないんだろう)
と、あたしは不思議だった。
ハルカちゃんはそっぽを向いて、「みんな行こう!」と言って、仲間の子といっしょに横断歩道に走り出した。全身真っ黒な人たちも、ふわふわとくっついて行った。
そこに、大きなトラックが信号を無視して走ってきた。
ハルカちゃんも、他の子たちも、トラックにはね飛ばされるか、大きなタイヤに踏みつぶされてしまった。
まわりにいた大人の人たちが悲鳴を上げたり大声を上げたりする中、全身真っ黒な人たちが、トラックを取り囲んで踊っていた。
うれしそうに。
楽しそうに。
その様子を見て、あたしはふと思った。
「あいつら、ハルカちゃんたちを連れて行ったんだ……」