単品怪談

家の中の物音(実話)


 我が家は木造モルタル3階建てで、同じような家が4軒並んでいます。長屋のように壁1枚隔てた隣は隣家、というわけではありません。接近してはいますが、とりあえずそれぞれ独立した一戸建てです。
 新築で購入したので、以前住んでいた人が首を吊ったとか、一家心中したというようなエピソードはありません。
 ですが、たまに奇妙なことがあります。
 いつ頃からだったか、記憶にありません。
 なんと言うかそのー、家の中で、音がするんです。
 家の中、もっぱら夜、布団の中で本を読んでいたりテレビを見たりしているとき、ふいに

どん

 という音が響くのです。
 たとえば安ビジネスホテルに宿泊して、隣の部屋の客が何かの拍子に壁にぶつかるか蹴りを入れるかしたときの音、そんな感じの音です。
 4軒並んだ家で、我が家は左から2番目、一番左はちびっ子が4人いる子だくさん一家。我が家の右隣は老夫婦二人住まい。
 ですから、家の左側、子だくさん一家の方から音が聞こえてくれば納得できますが、そうとは限らないので、奇妙なのです。

どん

 という音が、老夫婦側から聞こえることもあります。
 また、私は通常は3階の自室で書き物やネットなどをしているのですが、暑いときは2階のリビングにノートパソコンを持ってきて、そこで書き物をすることもあります。今もそうして書いています。3階はエアコンの効きが悪いもので。
 そういうとき、上から

どん

 という音が聞こえることがあります。
 わざわざ念を押す必要もないでしょうが、3階には誰もいません。
 子だくさん一家が音源ならば、2階にいても子だくさん一家の方向から音が聞こえそうなものなんですが。
 2階にいるときは、必ず上からです。

 音が連続して鳴ったら、たとえば足を踏みならすように「どんどんどんどん」と鳴れば、さすがに私もこれは異常な状況だと認識するでしょうが、たまに1回、

どん

 と鳴るだけなので、とりたてて怖くもありません。
 「変だなあ」とは思いますが。

 まあ、これが「ラップ音」だなどと短絡的に考えたりはしませんが、原因が明確でないのが、歯に物が挟まったようで、すっきりしません。
 なんなんでしょうね。

どん

 あ。また上で音がしました。


Tweet

単品怪談