単品怪談

陰陽譚







 その神社はいわゆる「陰陽神社」で、境内には巨大な男性器と女性器が祀られている。道を尋ねた老婆が、うら若い女性である私に場所を教えるのをためらったのも無理はない。
 本殿の裏に回ると、奉納された絵馬を保管する小屋があった。
 この手の神社ではよくあることだが、ここに奉納される絵馬もまた、ご多分に漏れず、男性器や女性器をかたどったものだ。
 この神社は夫婦和合や縁結びの御利益をうたっているが、実際はその逆だ。
 男性器の絵馬には男性名、女性器の絵馬には女性名が書かれ、それらのいずれにも、何十本もの釘が打ち込まれている。名前の主に対する恨み言が書かれたものもある。
 そう、ここはむしろ、縁切りで有名な神社なのだった。
 私は、山積みになった絵馬を、ひとつひとつ丹念に調べていった。
 ──あった。
 いくつもの陰陽神社をまわり、ネットでも検索して、ずっと探していたが、ようやく見つけた。
 その絵馬は男性器タイプと女性器タイプを紐で縛りつけてあり、やはり何十本もの釘が打ち込まれ、そして、私の名が書かれていた。






 これが、私を何ヶ月も苦しめていたのだ。
 私はその絵馬を取り出し、釘をすべて引き抜いて、紐をほどいた。あとで燃やすことにする。
 この絵馬を奉納した人間はわかっている。
 あの女だ。
 私に男を取られると邪推した女。
 私のことを、「ばけもの」「おとこおんな」「ふたなり」とさんざんなじった女。
 私が二ヶ月前に刺し殺した女。
 だが、これでもう大丈夫だ。
 私は晴れ晴れとした気分で、新たな女性器の絵馬にあの女の名を書き、釘を打ち込んでいった。


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