単品怪談

さっき、自宅で (実話)


 我が家は、木造モルタル3階建ての建て売り住宅です。
 玄関を入ると、真正面に2階への階段があります。
 玄関に入って左側にある4畳半の洋室が、母親の部屋です。
 部屋のドアは開き戸で、階段の前に立って振り返らないと、見えません。
 つまり、玄関に入ってそのまま階段を上がっていった場合、母親の部屋のドアは目に入らないわけです。

 ある夜、仕事から戻った私は、いつも通り玄関のドアを開けました。
 玄関左には、母親の部屋の窓があります。照明は点いていました。
 靴を脱いでいると、部屋の中から、がさがさ、というような音が聞こえました。
 コンビニとかスーパーで使うビニール袋、あれがこすれるような、がさがさ、という音でした。

 母親が何か片づけ物でもしているんだろう。

 特に不審に思うこともなく、私はそのまま2階に上がってゆきました。
 2階はダイニング・キッチンです。
 玄関のドアを開けた時点で私が戻ったのに気づいているはずだから、すぐに上がってくるだろう。
 私はそう考えながら、いつも通りダイニングに入るドアを開けました。

「はい、お帰りなさい」

 母親が、振り返って言いました。


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