単品怪談

「怖い話」のメール


 私とKくんは怪談サイト仲間であった。
 開設して間もない頃のKくんのサイトは、どうということもないごく普通の投稿系怪談サイトだったが、いつの頃からか、掲載されるのは洒落にならないほど怖い話ばかりになっていた。因果とか呪いとか……とにかく、こういう話を載せていいのだろうかと思われる話ばかりになっていたのだ。
 それをKくんに訊いてみたことがある。

「それが、実はですね」

 と、Kくんは言った。

「載せている話はメールで投稿されたものなんですけど、お礼のメールを返信しても、みんな『user unknown』で戻ってくるんですよ」

 で、わけがわからないものの、もったいないのでサイトに掲載しているという。
 その投稿は、「怖い話」という件名で送られてきていたのだそうだ。



 ──そのKくんが亡くなった。しばらく前から体調を崩していたらしい。
 葬儀から戻って、久しぶりに、パソコンを起動させた。ここ数日、メールチェックもしていなかったから、さぞたまっているだろう。ほとんどはスパムメールだろうけど。
 受信トレイに次々たまっていくメールを見ていて、ふと気づいた。
「怖い話」
 ひとつ、そんな件名のメールがあった。
 そのメールを開封しようと無意識にマウスポインタを持って行って、手が止まった。

 まさか。
 いや。でも、そんな。




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