黒神由貴シリーズ

番外編4.黒神由貴がデートした


 昨日の日曜、黒神由貴がデートしたとわかると、教室内は騒然となった。
 教室内にいたクラスメートたちが、私と黒神由貴を取り囲み、口々に問いただした。

「うそでしょ? いつの間にそんな相手見つけてたのさ。真理子。あんた、くろかみの相手が誰か知ってるんでしょ?」

「すまん。実はうちの兄貴なんだ」

「冗談だろお。くろかみの純潔を奪ったのが、よりによって真理子の兄貴ってか」

「真理子、あんたがいながら、なんてことよ」

「もうしわけない」

 私がクラスメートたちから責められている間、黒神由貴はその様子を見ながら、身を縮めている。

「そそ、そんでさ、そんでさ、どどど、どうだったの」

「ちょっと奈津実、鼻息荒いし。そんなに興奮すんなって」

「いやでもさ、いずれあたしもナニがナニする日も来るだろうしさ、後学のために、ここはひとつ、くろかみ先生に詳細を」

「なるほど。……で、くろかみ、どーよ」

 やがて黒神由貴が口を開いた。

「えっと……痛かった」

「いーーーーーー!!!!!」

「ちょっと血が出た」

「ちーーーーーー!!!!!」

「でも真理子のお兄さんが優しくしてくれて」

「!!!!!」

「救急絆創膏で手当てしてくれて」

「!!!!!」







「ちょっと待て。……バンソウコ?」

 クラスメートたちがとまどい顔でお互いの顔を見合わせた。私もそのうちの一人であった。

「……あれってバンソウコで手当てするものだったっけ?」

「あたしに訊くなよ。知らねってば」

「カオリン耳年増ケテーイ」

「てか、あれでバンソウコは使わんだろーぜ。どういうことさ、くろかみ」

「……新しく下ろした靴を履いて行ったんで、靴ずれができちゃって」

 黒神由貴がそう言ったとたん、それを聞いた私も含めた全員が、安物のコメディドラマのようにコケた。

「くろかみー。真顔で言ってるけど、おめーわざとボケてるだろ。ホントはどうだったのさ」

 立ち直ったマドカが、黒神由貴を問いただした。

「ひ・み・つ♪」

 黒神由貴はすまし顔で言った。







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