昨日の日曜、黒神由貴がデートしたとわかると、教室内は騒然となった。
教室内にいたクラスメートたちが、私と黒神由貴を取り囲み、口々に問いただした。
「うそでしょ? いつの間にそんな相手見つけてたのさ。真理子。あんた、くろかみの相手が誰か知ってるんでしょ?」
「すまん。実はうちの兄貴なんだ」
「冗談だろお。くろかみの純潔を奪ったのが、よりによって真理子の兄貴ってか」
「真理子、あんたがいながら、なんてことよ」
「もうしわけない」
私がクラスメートたちから責められている間、黒神由貴はその様子を見ながら、身を縮めている。
「そそ、そんでさ、そんでさ、どどど、どうだったの」
「ちょっと奈津実、鼻息荒いし。そんなに興奮すんなって」
「いやでもさ、いずれあたしもナニがナニする日も来るだろうしさ、後学のために、ここはひとつ、くろかみ先生に詳細を」
「なるほど。……で、くろかみ、どーよ」
やがて黒神由貴が口を開いた。
「えっと……痛かった」
「いーーーーーー!!!!!」
「ちょっと血が出た」
「ちーーーーーー!!!!!」
「でも真理子のお兄さんが優しくしてくれて」
「!!!!!」
「救急絆創膏で手当てしてくれて」
「!!!!!」
「ちょっと待て。……バンソウコ?」
クラスメートたちがとまどい顔でお互いの顔を見合わせた。私もそのうちの一人であった。
「……あれってバンソウコで手当てするものだったっけ?」
「あたしに訊くなよ。知らねってば」
「カオリン耳年増ケテーイ」
「てか、あれでバンソウコは使わんだろーぜ。どういうことさ、くろかみ」
「……新しく下ろした靴を履いて行ったんで、靴ずれができちゃって」
黒神由貴がそう言ったとたん、それを聞いた私も含めた全員が、安物のコメディドラマのようにコケた。
「くろかみー。真顔で言ってるけど、おめーわざとボケてるだろ。ホントはどうだったのさ」
立ち直ったマドカが、黒神由貴を問いただした。
「ひ・み・つ♪」
黒神由貴はすまし顔で言った。