単品怪談

ぼくのおばさん







 今晩も、ぼくの部屋におばさんがやってくる。

 おばさんが帰ってきて一週間になる。何ヶ月か前に、二人目のご主人が亡くなったんだそうだ。
 おじいちゃんは、ぶつぶつと文句を言っている。せっかく帰ってきたんだから、喜んで迎えてあげればいいのに。
 お母さんはずっと前に死んじゃったし、お父さんは単身赴任で遠くに行っているので、この大きな家にいるのは、ぼくとおじいちゃんとおばあちゃんの三人だけなんだから、空いている部屋はいっぱいあるのに。

「和哉くん、久しぶりー。大きくなったわねー。何年生? もうすぐ6年生? そうかあ。和哉くんももう大人なんだねー」

 そう言っておばさんは、何年ぶりかに会ったぼくをぎゅっと抱きしめた。いい匂いがして、柔らかくて、ぼくはおばさんが大好きだ。
 その晩から、おばさんはぼくの部屋に来た。──ちゃんと言うと、ぼくの布団の中に入ってきた。
 小さいときに、お母さんといっしょの布団で寝たことはあったけど、こんなことはされたことがなかったので、ぼくはすごくびっくりした。でも全然いやじゃなかった。






 おばさんが来るときは、音でわかる。
 ずるり。ずるり。そんな、何か大きなものを引きずっているような音がするので、すぐにわかる。
 ぼくの部屋のふすまが開いて、おばさんがそっと入ってきた。ずるずると音を立てながら、ぼくの布団に入ってくる。

「──和哉くん、おばさんが来るのを待ってたの? エッチね」

 そう言って、おばさんはふふっと笑う。
 そうして、おばさんはぼくのパジャマを脱がせて、キスをする。

「──おばさん、おじいちゃんに嫌われてるみたい」

 ぼくの身体にキスしながら、おばさんは言った。
 知ってる。今日も、おじいちゃんは大きな声でおばあちゃんに言っていた。

「あいつは年端もいかん頃から、男と見れば色目を使うて。だいたい、亭主は二人とも腎虚で死んどるんだろうが。あいつには何か悪いもんが憑いとるんだ。山向こうの拝み屋に憑きもの落としをしてもらんければ」

 なんでおじいちゃんは、そんなにおばさんのことを嫌うんだろう。
 おばさんはこんなにやさしいのに。
 ぼくの身体中に、ぐるぐると、何か太くてぬるぬるしたものが巻き付いている。
 おばさんの顔が、ぼくのすぐ前にある。
 おばさんは、ちろ、と舌を出す。
 その先が、ふたつに分かれている。


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