外に出るのにもたついてしまった。
辺りを見回すと、見覚えのある場所だった。あの人の家の近くにある公園だ。
まん丸なお月様が出ている。
出かけるのがすっかり遅くなってしまったが、早くあの人に逢いに行こう。約束していないのにいきなり逢いに行ったら、あの人は怒るだろうか。
というか、昔からあの人は怒りっぽかったな。最後に逢ったときも、いろいろひどいことを言われて、ぶたれたりした。
それからこの公園に連れてこられて……それから、どうしたんだっけ?
ゆっくりと歩き出す。
なんだか身体がだるい。
ずっと寝ていたせいだろうか。
服のあちらこちらに、土が付いている。こんな格好で歩いていたら、おかしな女だと思われてしまう。今が夜でよかった。
ああ。髪の毛にも土が付いてる。
あたしは髪を指ですいた。
すいた指の違和感に、あたしは自分の掌を見つめた。
指に大量の髪の毛がまとわりついていた。
顔がかゆい。
ほっぺに手を当てる。ずぶずぶと、なんの抵抗もなく指がほっぺの中に潜り込んだ。
びっくりして、あわてて指に付いた肉片を払ったら、指の肉も一緒にちぎれ落ちた。
あたし、どうしたんだろう。
そう言えば、どうしてあたし、公園にいたんだろう。
あの人のアパートが見えてきた。
2階にあるあの人の部屋への階段を、ゆっくりと上がる。
ドアをノックする。
ドアが開き、あの人が顔をのぞかせる。
あたしの顔を見て、あの人が絶叫する。
「こんばんは」
あたしは言った。
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朗読:あげまきよりか様
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朗読:ビストロ怪談倶楽部様